スマートコントラクトについて、別記事でまとめましたが、なんとなく仕組みは分かっても、具体的にどういう用途があるかわからないという人が多いと思います。ここでは、いくつかの分野に分けて、具体的なユースケース(適用例)をあげてみたいと思います。まだまだこれから適用される分野やケースが出てくると思います!
前回に引き続き、スマートコントラクトのユースケースを見てみるぞ。
うむ。くるしゅうない。
(なんでこんなに上から目線なんじゃ…)。今回は、不動産とサプライチェーンの適用例を説明するぞ。
不動産
これまでの不動産は、書類や仲介人が必要で、時間もコストもかかりましたが、スマートコントラクトを利用した場合、購入者が支払ったら、即座に手続き(不動産の権利の移転)が行われます。これには、従来の方法に比べて、つぎのようなメリットがあります。
- 仲介人が不要になる
スマートコントラクトによって、書類の確認や住宅ローンの承認等多くの複雑なプロセスが自動化されることが期待されています - コストが安くなる
必要なプロセスが自動化されることによって、購入者と売却者が直接取引できるようになるので仲介手数料が不要になり、トランザクションコストだけで済みます - 透明性が高くなり、信頼度が増す
一度デプロイされたスマートコントラクトやスマートコントラクトによって実行された結果は勝手に変更されることはありません。ブロックチェーン上にあるので変更できず、また誰もが見ることができます。 - 安全性が高い
ブロックチェーンの性質上ハッキングしたり、データを操作したりすることは極めて難しいです。データは分散しており、全てを変更するのは事実上不可能です。 - スピーディーかつ効率的である
不動産に関わるプロセスを完了させるには長い時間がかかりますが、スマートコントラクトの場合は、ブロックチェーン上のトランザクション処理だけなので、すぐに完了させることができます - 流動性が向上する
不動産は非常に流動性が低いですが、スマートコントラクトにすることで速く処理できる結果として流動性が高まります。トークン化することで、デジタルでアセットのやり取りができるようになります。また、アセット(不動産の権利)を小分けにすることで、少量だけを買うなどのことが可能となります。 - 不動産投資が身近になる
従来の不動産投資は投資額が大きくなりがちですが、好きな金額から好きな都市へ投資できるようになります(例:Parcl)
不動産におけるその他の適用例
以上は不動産の売買ですが、他にも賃貸に利用される例などがあります。賃貸の場合には、オーナーが諸条件(賃料、管理手数料、支払い頻度等)を決め、それをスマートコントラクトとしてデプロイし、居住者が条件をオンラインで確認し、それぞれがデジタル署名するというものです。
また、厳密には、スマートコントラクトとは少し異なりますが、不動産をNFT化してオークションを行う例もあります。登記上は特定の会社名、その権利を法的な書類によって保証する形で、NFTホルダーが不動産を所有できるという形態です。
サプライチェーン・マネージメント
次にサプライチェーンにおけるユースケースを見てみます。
サプライチェーンとは、調達、生産、物流、販売、購買という、製品が作られるところから消費者が購入するまでの一連の流れのことを言います。
サプライチェーンの一連の流れを通じて、製品が製造されたあとの動きを追跡することが、ブロックチェーン、IoTデバイスによって可能になります。IoTデバイスは製品もしくは製品を流通させる際のコンテナに取り付けられ、スマートコントラクト向けにデータを送ります。
スマートコントラクトは送られてきたデータに基づいて、事前に定義した条件にマッチするかを確認し、マッチした場合には、自動で特定の処理を実行します。
- 製造者は、製品の製造状況(ステータス)を関連者と共有する
- ステータスが製造完了に近くなったら、配達業者はピックアップに向かう
- 輸送中は、コンテナに取り付けられたGPSセンサーによって配達状況が関連者に共有される
- 納品・検品されたら、RFIDによりそれを検知し、スマートコントラクトにステータス変更を知らせる
- ステータスが正常のものについては、速やかに支払いを行う(製造者、配達業者等のデジタルウォレットに送金される)
ブロックチェーンがこのようにIoTデバイスとの通信を受け取るには、ブロックチェーンとその外部のインターネットの世界をつなぐ必要があります。Oracleノードと呼ばれるゲートウェイのようなサービスがこの役割を担います。
有名なものでは、Chainlinkというサービス(オラクル・ネットワーク)があります。Chainlinkを例にすると、上記のようなIoTデバイスとの通信だけではなく、様々なAPIの呼び出し(例えば通貨レートを取得するAPI等)に対応しています。このように実世界とブロックチェーンが繋がることによって、格段に適用できる範囲が広がることが期待できます。
サプライチェーン・マネージメントにおけるその他の適用例
食品業界では、配送中の冷凍食品の温度をはじめとして食品の品質に影響を与えうる各種情報をIoTデバイスからブロックチェーンに送り、トラッキングするということを目指しています。
IoTデバイスから送られてきたデータを確認し、事前に定義された品質基準と照らし合わせて問題がなさそうかを判断することができるようになります。例えば、温度が一定上の場合、人間が通知を受けて対処を行うとか、食品の状態に応じた金額が支払われるといったことが可能です。
※ 前述のChainlinkのドキュメントによれば、GPS、速度、加速度、温度、湿度、輝度等のセンサー情報と接続が可能という記載があります。
また、海上輸送で世界最大規模を図るマースク(Maerk)はIBMと共同でTradelensというブロックチェーンを活用したサプライチェーン向けのソリューションを提供しています。従来は紙ベースの非効率なやり取りが国際貿易においては一般的でしたが、ここに関わる負荷を低減しています。Hyperledger Fabricをベースに構築されています(Hyperledger Fabricは企業向けのブロックチェーンソフトウェアとして最も一般的なものの一つです)。
どうじゃ。少しは適用例のことは分かってもらえただろうか。
うむ。不動産とサプライチェーンのユースケースは有用そうじゃな。
わかりやすかったぞ。よくやった、乙。
褒め方(笑)
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